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im/pulse(展覧会「im/pulse: 脈動する映像」図録)

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA 発行

新書版変型サイズ/170✕100mm/320頁/2020年

並製/表紙布貼り/表紙シルクスクリーン印刷/本文モノクロ+特色

編集:藤田瑞穂、矢野原佑史

写真:来田猛、大島拓也

挿画:伊藤学美

AD+ED+D+DTP:松本久木


 


本書は京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで開催された展覧会「im/pulse: 脈動する映像」に関連して発行されたものである。展覧会自体は映像人類学を中心に据え、幅広い学問領域の知と技術を活用しながら、言語的な理解だけでなく、深部の感覚や感性の作用の差異を扱う表現方法の現在形や、感覚民族誌的観点から見ても特に優れた実践であるアート表現群を展望するものとなった。

一方、書籍としてのアウトプットでは執筆者(研究者)おのおのが自身の専門領域の知と手法を駆使しながら自らが紙面での表現者として、自身の専門領域を再解釈し、拡張することを試みた。まずデザイナーが素案を作成し、それに意味的、学術的、そして感覚的解釈でもって幾度も修正を加えていく作業は、知的興奮を覚えると共に不思議な身体感覚を伴ったものとなり、人類学のさらなる可能性を示した。

図版の選択、ページ構成、紙面レイアウト、書体選びなどを執筆者とデザイナーが共同でおこない、さらに本全体の時間的流れが一定にならないよう緩急、強弱、圧縮、伸張、中断、反復などを織り交ぜ、読者の時間認知を意図的に狂わせようとした。そのことによる読書体験自体がセンサリーメディア(人の感覚をキーワードにした文化の記録と表象の方法)を積極的に取り入れだした新しい人類学のアプローチに通ずると考えたからだ。



 


[内容]

藤田瑞穂|im/pulse: 脈動する映像

ヴィンセント・ムーン×contact Gonzo×川瀬 慈トークセッション

村津 蘭、ふくだぺろ、矢野原佑史|参与型展示《モノ/ヒト/物神》に関する省察

佐藤知久|ヴィンセント・ムーン─映像の参与観察

contact Gonzo|Physicatopia

村津 蘭|死者と生者の交感──ベナンの仮面結社とジェラーの死

神野知恵|韓国芸能と食文化の深い関係

ふくだぺろ|異なる時間的存在についてのカメラによる分節化

矢野原佑史|グルーヴする「世界」の研究への試論──カメルーン東南部熱帯林地域に暮らすバカの語りの考察から

川瀬 慈|ドンチョ──靴磨きの少年とベル

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Vincent Moon|ヴィンセント・ムーン
1979年フランス、パリ生まれ。パリ出身のインディペンデントフィルムメーカーであるヴィンセント・ムーンは、フランス発の音楽情報サイト「La Blogothèque」のためにシネマ・ヴェリテの手法(作り手の存在が映画から排除される虚構上のトリックを排し、映像の作り手が被写体の人々と関わる行為そのものをも記録し、映画をより真実に近づけようとする手法)によって制作された作品の数々でその名を知られるようになる。2009年からは遊牧民のごとくカメラひとつで世界を旅し、現地の伝統音楽から宗教的な儀式、新しい実験音楽までを幅広く探求し映像を制作。これらの旅の記録映像は、彼の生涯をかけたノマディック・フィルムメイキングプロジェクトとしてウェブ上で公開され、また世界各地でフィールド録音された音源は、自身のレーベルであるCollection Petites Planètesより配信されている。
>>www.vincentmoon.com

contact Gonzo|コンタクト・ゴンゾ
2006年に塚原悠也と垣尾優により結成されたパフォーマンス集団。「contact Gonzo」とは、1970年代のゴンゾ・ジャーナリズムに由来し、グループの名称であると同時に、身体を「接触」させる独自の方法論の名称でもある。街中や公演で即興的なパフォーマンスを繰り広げつつ、映像や写真作品を制作。結成当初からパフォーマンスの記録映像をYouTube にアップするなど、メディアを活用した活動を展開。また、2007年「吉原治良賞記念アートプロジェクト」に参加以降、現代美術の分野でも注目され、多くの国際展や芸術祭などに参加している。2013年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)にてパフォーマンスを発表した。現メンバーは塚原悠也、三ヶ尻敬悟、 松見拓也、NAZE の4人。パフォーマンス、インスタレーション、マガジンの発行など多岐にわたる活動を展開している。2011–2017 年度セゾン・フェロー。

Anthro-film Laboratory|アンスロ・フィルム・ラボラトリー
映像人類学を起点とするAnthro-film Laboratoryは、文化人類学、映像、アートが交叉する実践のなかで、言語に依拠するだけでは伝達されえない知や経験の領域を探求し、人文学における新たな知の創造と語り/体験の新地平を切り開くことを目指してきた。文字に依拠した成果を前提とする人類学は、調査する者の身体を「書く者」として規定し、その経験や知の在りようを「書く」「読む」枠組みの中に限定してきたといえる。そうした認識と手法に対して問題提起をしてきたのが映像人類学である。Anthro-film Laboratoryは、調査者と受け手の双方の身体を、記号を解する存在である以上に感覚的な存在であると考えている。両者を媒介するものを筆記具だけでなく、カメラ、レコーダー、携帯電話などの技術、或いは調査者の肉体と音声にまで拡張することで、従来の枠組みに縛られない地平を切り開こうとしてきた。視覚のみならず、触感や聴覚に働きかける知を、イメージやサウンド、詩など、多岐にわたる手段で表現していくことが企図されている。運営委員:川瀬 慈、ふくだぺろ、村津 蘭、矢野原佑史 ほか
>>http://www.itsushikawase.com/anthro-film_lab/


佐藤知久|さとう・ともひさ
1967年生まれ。京都市立芸術大学芸術資源研究センター教授/専任研究員。専門は文化人類学。出来事とその経験を記録するための活動と組織、記録メディアとアーカイブのあり方をめぐる研究を、現代芸術・都市空間・震災を軸に行っている。著書に『コミュニティ・アーカイブをつくろう! せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」奮闘記』(甲斐賢治・北野央と共著、晶文社、2018年)、『フィールドワーク2.0』(風響社、2013年)など。

村津 蘭|むらつ・らん
1983年、大阪府生まれ。一橋大学法学部卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程在籍中。日本学術振興会特別研究員。専門は映像人類学、宗教人類学、アフリカ地域研究。主な研究テーマは、ベナンの宗教における憑依、妖術、悪魔祓いについて。民族誌の映像作品に「トホス」(東京ドキュメンタリー映画祭奨励賞受賞、Ethnografilm Paris Festival選出上映等)、「The Season of Vodoun」、「ジョヌディド」。インスタレーション作品に「触れたら、死ぬ」(「im/pulse: 脈動する映像」、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2018年)など。

ふくだぺろ
1982年生まれ。映像人類学、芸術人類学。立命館大学先端総合学術研究科博士課程在籍中。アフリカの移民や狩猟採集民における現実と過去(未来)の創造を主要テーマに、論文、映像、詩、絵、写真、小説、建築といったメディアを複合的に用いて研究=実践に従事する。代表的な映像作品に「o: a Film shot with water lens」(2016年、マンチェスタ一国際映画祭実験映画賞受賞)。著書に『ふぃっしゅのーちい』(私家版、2016年)、『Flowers like blue glass』(Commonword、2018年、Highly Commended by Forward Prize)。展 示作品に「yoyo」(「im/pulse: 脈動する映像」、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2018年)など。

矢野原佑史|やのはら・ゆうし
1981年、鹿児島県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了後、現在、京都大学アフリカ地域研究資料センター研究員。専門は音楽人類学。主な研究テーマは、カメルーンの熱帯林地域における在来の音文化ならびに都市部の若者たちによるヒップホップ・カルチャーの変遷。映像作品に「野帳 feldnotes_180610」、展示作品に「Polyphonic Mono-Logues」など。著書に『カメルーンにおけるヒップホップ・カルチャーの民族誌(京都大学アフリカ研究シリーズ21)』(松香堂書店、2018年)、共著書に『アフリカン・ポップス!─文化人類学からみる魅惑の音楽世界』(明石書店、2015年)など。

神野知恵|かみの・ちえ
民俗芸能・民族音楽研究者。2006年の韓国留学をきっかけに打楽器芸能「農楽」を全羅北道高敞郡で学び、研究を始める。農楽のリズムの中の身体性、民俗信仰、哲学などに関心を持つ。2016年に東京藝術大学大学院音楽研究科で音楽学博士号取得。博士論文は、1950年代に活躍した女性農楽団の主要演奏者、羅錦秋の人生と芸術世界を主題とした。その成果の一部を『韓国農楽と羅錦秋─女流名人の人生と近現代農楽史』(風響社、2016年)として出版した。2018年4月より国立民族学博物館機関研究員。現在は、西日本各地で獅子舞による門付けを続ける「伊勢大神楽」を追いかけながら、日韓の門付け芸能比較研究に挑んでいる。

川瀬 慈|かわせ・いつし
1977年、岐阜県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了後、マンチェスター大学グラナダ映像人類学センター研究員を経て、現在、国立民族学博物館/総合研究大学院大学准教授。専門は映像人類学、民族誌映画。2001年より、アフリカ、主にエチオピア北部の地域社会で活動を行う吟遊詩人、楽師たちの人類学研究を行い、同時に人類学、シネマ、現代アートの実践の交差点から、映像、写真、音を用いた話法を探究。著書に『ストリートの精霊たち』(世界思想社、2018年、第6回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞)、共編著書に『見る、撮る、魅せるアジア・アフリカ!─映像人類学の新地平』(新宿書房、2006年)、『フィールド映像術』(古今書院、2015年)、『アフリカン・ポップス!─文化人類学からみる魅惑の音楽世界』(明石書店、2015年)。映像作品に「Room11、 Ethiopia Hotel」(イタリア・サルデーニャ国際民族誌映画祭にて「最も革新的な映画賞」受賞)、「ラリベロッチ─終わりなき祝福を生きる」、「精霊の馬」など。

藤田瑞穂|ふじた・みずほ
1978年、兵庫県生まれ。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAチーフキュレーター/プログラムディレクター。国立民族学博物館外来研究員。大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻比較文学専門分野博士後期課程修了。近年の主な展覧会企画に、ジョーン・ジョナス京都賞受賞記念展覧会「Five Rooms For Kyoto: 1972–2019」(2019年)、ジェン・ボー「Dao is in Weeds」(2019年)、クリスチャン・ヤンコフスキー「Floating World」(2018年)、田村友一郎「叫び声/Hell Scream」(2018年)、「im/pulse: 脈動する映像」(2018年)など。

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)
京都市立芸術大学では、学内機関として1991年より芸術資料館を開館し、陳列室で所蔵品の展示を行うほか、大小二つの学内ギャラリー、その他の学内施設も活用しながら展示活動を継続しています。これらは作品鑑賞の機会を提供し、また学生たちの日頃の活動成果を公開する実験的発表の場としても機能しています。これらのスペースに加えて、2010年春、京都堀川音楽高等学校の新築移転に伴って、その敷地内南側に建てられたギャラリー棟(堀川御池ギャラリー)内に京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)が開館しました。
@KCUAでは当ギャラリー学芸スタッフの企画による特別展のほか、京都市立芸術大学の研究成果発表展ならびに教員・在学生・卒業生による企画展などの展覧会を開催しています。そのほか、国内外で活躍するアーティストを講師に迎えた若手アーティスト対象のワークショップやレクチャー、京都市立芸術大学の京都駅東部エリアへのキャンパス移転に向けたプロジェクトの実施など、展覧会だけにとどまらず、多岐にわたる活動を実施しています。
>>「im/pulse: 脈動する映像」展覧会サイト































 


ISBN MK7
定価

3,000円(本体2,727円、税273円)

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