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こわれがめ 喜劇

Akira Ichikawa Collection No.2

ハインリヒ・フォン・クライスト 作 市川 明 訳

新書判/106×173mm/400頁

並製本/本文特色印刷/ドイツ語原文付き/2015年

AD+D+DTP:松本久木


市川明によるドイツ語圏演劇翻訳シリーズ第2巻。

偶数頁にドイツ語原文を底本に即した形式で掲載し、奇数頁に日本語新訳を同様の形で掲載することで韻文劇の醍醐味である韻文のリズムと発話のリズムを再現した。
作品鑑賞のみならず、日独語比較研究を試みる読者・研究者の便をも図る意欲作であり画期的な一書である。


>>Collection No.1『タウリス島のイフィゲーニエ』ゲーテ作
>>Collection No.3『賢者ナータン 五幕の劇詩』レッシング作

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 従来から笑いについて言われてきたのは優越性の笑いだ。パニョルは「笑いは勝利の歌である。それは笑われる人に対して笑い手のうちに突然見出される優越感の表現である」と言う。ホッブスも同様に笑いを、「他人の弱点に対して、自分の中に優越感を覚えたときに突然生じる勝利の表現」と定義している。プラトンのように笑いは他人の犠牲のもとに生じるものだとして、笑いにおける「悪意ある性格」を指摘する者もいる。
 ドイツ演劇の中で喜劇の代表作とされるクライストの『こわれがめ』にあるのもこうした優越性の笑い、勝利の表現、解放の歌だと思う。ベルグソンは喜劇の機能を「欠陥のある、硬直化した人物を社会から排除すること」と規定したが、『こわれがめ』でも、村長アーダムが悪事を暴かれ、村から追放される。すでに指摘したように、最初から犯人がわかっていて追求していくという遡及的構造を持った劇で、『オイディプス王』の喜劇版とも言える。
(…)
 揺るぎない支配体制が崩れ、権力者がその座を捨てて逃げ出すというこの喜劇は、さまざまな時代、社会にあって多様な演出を可能にしてきたといえるだろう。それぞれの時代の権力者たちがアーダムになぞらえられ、風刺され、批判されてきたのである。
(市川明「解題」より)
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市川 明(いちかわ・あきら)
大阪大学名誉教授。1948年大阪府豊中市生まれ。大阪外国語大学外国語学研究科修士課程修了。1988年大阪外国語大学外国語学部助教授。1996年同大学教授。2007-2013年大阪大学文学研究科教授。
専門はドイツ文学・演劇。ブレヒト、ハイナー・ミュラーを中心にドイツ現代演劇を研究。「ブレヒトと音楽」全4巻のうち『ブレヒト 詩とソング』『ブレヒト 音楽と舞台』『ブレヒト テクストと音楽──上演台本集』(いずれも花伝社)を既に刊行。近著にVerfremdungen(共著Rombach Verlag, 2013年)、『ワーグナーを旅する──革命と陶酔の彼方へ』(編著、松本工房、2013年)など。近訳に『デュレンマット戯曲集 第2巻、第3巻』(鳥影社、2013年、2015年)など。多くのドイツ演劇を翻訳し、関西で上演し続けている。

ハインリヒ・フォン・クライスト(1777–1811)
ドイツの小説家、劇作家、ジャーナリスト。
1777年10月18日、フランクフルト・アン・デア・オーダー生まれ。フランス革命から展開した激動の時代、自己矛盾に苛まれながらも写実的手法を用いた鮮烈な作品を残した。
1805年、ケーニヒスベルクで官吏の職に就く。職務の傍ら喜劇『こわれがめ』(1803–1806, 1811)や短編『ミヒャエル・コールハース』(1808)を執筆。1807年、スパイ容疑でフランスに収監。釈放後、祖国に戻り、愛国主義的な戯曲『ヘルマンの戦い』(1808)を執筆。反ナポレオン戦争を支持し、新聞への寄稿をはじめ精力的な活動を行う。戯曲『ペンテジレーア』(1807)の一部を掲載した雑誌「フェーブス」をゲーテに送るが、理解を得られなかった。1810年、短編集を発行。『ミヒャエル・コールハース』『O侯爵夫人』(1808)、『チリの地震』(1807)が収録された。同年には戯曲『ハイルブロンのケートヒェン』(1808)が、上演を拒否される。1810年創刊の「ベルリン夕刊新聞」は検閲に遭い、翌年廃刊となる。
1811年11月21日、ベルリン郊外のヴァン湖畔で人妻ヘンリエッテ・フォーゲルとともにピストル自殺。
存命中は顧みられなかったクライストだが、19世紀後半以降本格的な評価が進み、現在ではドイツを代表する作家のひとりに数えられる。没後101年の1912年には、新進気鋭の才能の発掘を目的とする文学賞「クライスト賞」が創設されている。












 


ISBN 978-4-944055-76-0
定価

1,296円(本体1,200円、税96円)

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