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劇場がないじゃ、話になるまい。だから、新しい形式が必要なんですよ。新形式がいるんで、もしそれがないんなら、いっそ何にもないほうがいい。

カルチベート・プログラム2015報告エッセイ集

合同会社地点 編集・発行

A6判/105×148mm/344頁

並製本無線綴じ/2016年

AD+D+DTP:松本久木

>>2014報告エッセイ集はこちら


演劇の可能性を拡張し続けている劇団、地点。
不断に生み出される作品群は国内外で高い評価を得ているが、
創作活動のみならず、劇場文化をも自らつくりだそうと試みている。
彼らの拠点、アンダースローで開催された参加無料の「カルチベート・プログラム」。
受講者による報告エッセイ集は観客による〈一級の演劇論〉。


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この本は2015年6月から9月にかけて行われたアンダースロー「カルチベート・プログラム」に参加した皆さんの報告エッセイをまとめたものです。
今年は新しい試みとして、「ゲストパフォーマンス」の枠組みを設け、contact Gonzoと空間現代にそれぞれ新作を発表してもらいました。その結果、レパートリー6本+ゲストパフォーマンス2本+レクチャー2回の計10回のプログラムとして開催され、参加者の皆さんには文字通り足繁く通っていただくこととなりました。
エッセイ集のタイトルはレパートリー作品の台詞から引用しました。今年はチェーホフ『かもめ』から、青年トレープレフが自らの演劇論をぶつシーンです。三浦基の後記にも登場するこの「新しい形式」という言葉をタイトルに使ってみようと思いました。終幕でトレープレフはこうも言います。
「そう、おれはだんだんわかりかけてきたが、問題は形式が古いの新しいのということじゃなくて、形式なんか念頭におかずに人間が書く、それなんだ。」
劇団にとっては観客が、観客にとっては劇団が、凝り固まった頭に水をぶっかける「人間」となって立ち現れてくる。そのような空間と時間をこれからもつくっていきたいと思います。

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『演劇とは何か』(岩波新書、現在絶版なので早く復刊してほしい)を高校生のとき、偶然に手にした。演劇をまともに見た事もないのに、熱心に読んだ記憶がある。後に出会うことになる鈴木忠志という演出家のその本は、高校生の私に現代演劇の考え方を分かりやすく提示してくれた。この本がなければ私は演出家になっていなかったかもしれない、とすら思う。と同時に今日、あの本に書かれていることに耳を傾けても何も得られることはないのではないかと確信している。消化してしまったと言えば生意気だが、それだけではない気がする。新書という形式の枠内で、芸術を語ること。芸術の理解に教養が必要なのは当たり前のことだけれども、そういう上から目線ではまずいので、手取り足取り恐怖心を取り除き、読者である観客に本来は難しいことを分かりやすく説明する行為。高校生の私には必要だったあの本が、本当に今の高校生に必要なのかを考える。はっきり言おう、私が高校生だったときからあの形式は必要なかった。高校生の私は、実は潜在的に気がついていたはずだ。だから、あの本が私を演出家にしたというのは、私の郷愁、奢りでしかない。このプログラムが観客育成を名乗った気取りであることを、このエッセイ集が見事に明らかにしているではないか。新書にかわる新しい形式の誕生を参加者の皆に感謝したいが、そんな野暮はしない。

 それよりも今日も本番やってます。
 あなたはそれを観にくれば済むのです。
 そして私たちにとって何が済まされないことなのか? 
 演劇は応え続けます。

三浦基(「後記」より)

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地点|CHITEN
多様なテクストを用いて、言葉や身体、光・音、時間などさまざまな要素が重層的に関係する演劇独自の表現を生み出すために活動している。劇作家が演出を兼ねることが多い日本の現代演劇において、演出家が演出業に専念するスタイルが独特。
2005年、東京から京都へ移転。2006年に『るつぼ』でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。2007年より<地点によるチェーホフ四大戯曲連続上演>に取り組み、第三作『桜の園』では代表の三浦基が文化庁芸術祭新人賞を受賞した。チェーホフ2本立て作品をモスクワ・メイエルホリドセンターで上演、また、2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘で初のシェイクスピア作品を成功させるなど、海外公演も行う。2013年、本拠地京都にアトリエ「アンダースロー」をオープン。(法人名:合同会社地点)
http://chiten.org/


アンダースロー
2013年7月に開場した地点の稽古場兼アトリエ。構想に2年、改修工事に1ヶ月半をかけ、劇団の思い描く「劇場」をかたちにすべく、元ライブハウスだった空間をリノベーション。レパートリーの上演や新作のための稽古を日々行っている。「アンダースロー」は和製英語で下手投げの意。地下から劇場文化を発信する気概を込めて命名された。中原中也の詩「春の日の夕暮れ」にこの言葉が使われている。









 


ISBN MK5
定価

540円(本体500円、税40円)

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